ワクワク開催趣旨

 これまで私たち「福島の親子たちにハンセン病療養所で保養してもらうプロジェクト」メンバーは、ハンセン病問題と出会い、様々な課題と向き合ってきました。その運動の中で国家による隔離政策というものがいかに人間と人間を切り離していくものなのかを直接言葉で聞いてきました。

その中で、隔離政策に積極的に協力し後押ししてきた私たちが所属する真宗大谷派教団のあり方、さらには、それらに無関心であったということも含め、隔離の持つ非道さを見抜けず隔離政策に加担してきた私たち一人ひとりのありかたというものが厳しく問われ続けてまいりました。

私たちはもう一度ハンセン病問題と出会い直し、回復者の方々の姿に出会い、言葉に耳を傾け、そのことによって感じたことをまた行動として表現してこようと活動してきました。その中で学び、知り、得たものは人と人とが生きあうということの尊さと、そのことを奪ってきた歴史をもう繰り返さないという覚悟です。

3.11東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故は原発というものが、人と人とが生きあうということを奪うものだということを明らかにしました。そのことを受け私たち大谷派教団も昨年12月「原子力発電所に依存しない社会の実現」に向け、内閣総理大臣へ要望書を提出し、本年4月には、すべての原子力発電所の運転停止と廃炉を求めるという宗派の見解を出しました。教区や個人のところでも教団関係者が様々な形で福島の人たちを被曝から守ろうと立ち上がりその思いを行動に移しています。

これまでハンセン病問題に関わり、取り組んできた私たちだからこそ今できることがあるのではないかと思案し立ち上げたものが、ハンセン病療養所に福島の親子にきていただき保養をしてもらうという企画です。なぜハンセン病療養所に?と思われるかも知れませんが、それには理由があります。

「福島はもう限界です」「どうか福島のことを忘れないでください」直接福島のお母さんから聞いた言葉が耳から離れません。それは療養所に隔離することでその人の存在をなかったかのようにしてきたハンセン病政策と、3.11以降の福島の人たちに対するこの国の対応が私たちの中ではっきりと重なってきます。放射能被曝という目に見えない不安は確実に福島の人たちが人間として生きたいという根本的な願いを奪い続けています。

ハンセン病療養所はこれまで隔離の象徴として位置づけられてきました。しかしこれからは差別からの解放、いのちを守る象徴として療養所を位置づけていきたいと考えています。その意味でも福島の人たちを被曝から守る場所がハンセン病療養である必要性は高いと考えています。今回は邑久光明園、大島青松園、菊池恵楓園の3つの療養所にご協力をいただきそれぞれのところで実行委員会を立ち上げこのプロジェクトを運営していく予定です。